脳外科 resident notes

若手脳外科医による(基本的に)脳外科レジデントのためのブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

穿通枝について

かなりふわっとした、全くアカデミックではない、でも大事な穿通枝についての話をしてみます。 穿通枝は、基本的に(相対的に)太い動脈の側枝として存在します。例えばM1(2-3mm)から起始するLSA(300-700μm)のような感じですね。 当然ながら、主幹動脈の方に…

血管内治療のX線防護衣について

番外編。余談です。 血管内治療や脳血管造影をする時に着るあの鉛の防護衣、暑いですよね。 重いし、通気性は一切ないので、長時間の治療の後だとスクラブが汗で変色しているなんてこともしばしばあろうかと思います。 実は、ご存じの方も多いかと思いますが…

内頸動脈閉塞症に対する血栓回収療法

血栓回収は、中大脳動脈(M1)閉塞の方がICA閉塞よりも考えるポイントが少なくて簡単だと思っています。(個人の見解) 自分の下で研修しているレジデントの先生の発言を受けて、内頸動脈(ICA)が詰まった場合の血栓回収にはいくつか考え方にコツ、というか…

Acom瘤に対するinterhemispheric approachのバリエーションについて

Acom瘤を開頭でclippingする場合、まず前から行くか横から行くかという選択肢がありますよね。(そもそも最近はcoilingで行くことが多くなりましたが…) これに関しては色々な施設で色々な方針があるかと思いますが、おそらくもっとも一般的かつ中庸な方針と…

マイクロカテーテルの「テンション」について

動脈瘤コイル塞栓術におけるマイクロカテーテル操作について言語化してみます。 血管内治療初心者向けの内容です。 カテーテルのshapingについては今回は置いておいて、瘤内への誘導とコイルを入れていく際の考え方です。 システムについても今回は触れませ…

静脈洞血栓症

静脈洞血栓症の病態はそこまで難しい訳ではないですが、ちょっとその捉え方、治療の考え方に分かりづらいところがあるのかなと思ったので取り上げてみます。 病態、現象としては単純で、静脈洞に血栓ができる病気です。 原因には先天性の凝固異常や外傷、経…

シルビウス裂開放のコツ

本来なら内容的にもっと早めに取り上げても良かった内容なのですが、なかなか言語化するのが難しかったテーマ。 sylvian fissureを開けること自体は何となくで出来ていたのですが、効率が悪い感じがしていたり、上手くいくときと難渋するときがあったりで最…

STA-MCA bypassのコツ② 吻合編

実際の手順を段階ごとに分けて、それぞれで気を付けるべき点、自分が気を付けている点を挙げてみます。注意点を網羅しきることは不可能ですし、人によって気にすべきことも違うと思いますし、流派による差もあるでしょう。その辺りは踏まえてもらった前提で…

STA-MCA bypassのコツ① 準備編

STA-MCA bypassと言えば、clipping、CEAと並んで若手が早く出来るようになりたい血管外科手術手技の一つではないでしょうか。 STA-MCA bypassそれ自体を目的とする手術もありますが、何かあった時のレスキューや保険(insurance bypass)としての意味で行う…

脱毛を避けるために

最近テレビを見ていて、ふと、手術に伴う脱毛はなるべく避けたいよなぁ…と思うことがありました。 出来る限りの注意を払ったうえで脱毛してしまう分にはしょうがないところもあるのかもしれませんが、目立つ脱毛は、ただでさえ侵襲が大きいという開頭手術の…

経鼻胃管挿入のコツ(意識がない場合)

たまにこれを知らない人がいて、異常に手こずっているのを見るので。 意識がある人に経鼻胃管を挿入する際は、嚥下をしてもらえばチューブが食道に送り込まれるのでまず失敗することはありません。 問題は意識障害があったり全身麻酔下だったりで意識がない…

脳室前角穿刺のコツ

触れていなかったので、需要はあまり無さそうですが一応… まさにこのブログの対象としているレジデント向けの内容。 脳室外誘導(ドレナージ)、V-Pシャントなどで必要となる側脳室前角穿刺ですが、ブラインドで刺すことが多いので、経験が少ないと緊張する…

Power Pointのスライド上にCT・MRIの連続画像を貼ってパラパラ漫画のようにする方法

上手い表現を思いつかず冗長なタイトルになってしまいました… 一度ネットで見つけてやり方を覚えたのに、その後しばらくやらなかったら忘れてしまった、やり方が載っていたページも見つからなくなってしまった、ということがあったので備忘録です。 CT・MRI…

もやもや病

もやもや病について。 医師国家試験レベルだと、血管が細くなって代わりにもやもや血管ができる病気…ぐらいの理解でしょうか。 もう少し本質的なところから説明してみたいと思います。 医学生、研修医向けです。 個人的な理解に基づく内容も入っているのでご…

血管内治療 コイル塞栓術

ご無沙汰しておりました。 近況としては、血管内専門医の試験に合格したり、開頭手術の方ではSTA-MCA bypass、CEA、三叉神経痛や片側顔面けいれんのMVDなんかをやらせてもらったりしています。 色々あって全国的に手術件数が減っているのではないでしょうか…

顕微鏡下手術での手の震えについて

手というか道具の先端ですが、最初のうちは震えたり、安定しないことがあるかと思います。 ハサミの先端がプルプルしていると周りもひやひやするしカッコ良くないので、もちろん出来ればそれは改善したいところですよね。 ということでそのためにどうすべき…

脳外科の抗血栓療法

脳外科における抗血栓療法(抗血小板療法、抗凝固療法)について。 初学者向け。 凝固カスケードなどの詳細な機序は置いておいて、臨床的にどう考えてどの治療薬を用いれば良いかと言ったことを述べてみます。 まず、血栓がその形成機序の観点から大きく分け…

髄液排出の意義について

脳外科の手術において、割と大事なのにも関わらず何となくその意義が理解しづらい「髄液を排出する」という操作について。 髄液を排出すると頭蓋内(もっと正確に言うとくも膜内)の内容物が減るのですが、先に説明してしまうと、その意義は大きく分けて2つ…

前頭洞の処理

basal interhemispheric approachなどで解放されることがある前頭洞ですが、うまく処理しないとその後に髄膜炎・脳膿瘍などをきたして大変なことになることがあります。 今回はその辺りを扱ってみたいと思います。 前頭洞は副鼻腔の1つで、鼻前頭管という管…

解剖の理解や新たなapproachの習得について

まとまりのない雑記です。 頭頸部の解剖は先人たちによって詳細なところまで明らかにされており、approach法もありとあらゆる方法が考案され、少しずつ改良されることで確立されています。 デバイスの進化がない限り画期的なapproach法というのはちょっと出…

clipをかける時のコツ②

clipをかけ終わったところから色々トラブルを想定して書いてみます。 ・母血管あるいは分岐血管が狭窄・kinkしてみえる、分岐血管の血流が弱まっている これは比較的起こり得る事象です。 まず、本当にclosure lineに沿ってclipがapplyできているか確認しま…

clipをかける時のコツ①

未破裂脳動脈瘤や動脈瘤性のくも膜下出血に対して行われる開頭neck clipping術は、動脈瘤にclipをかけて破裂(再破裂)予防をするという言ってしまえば単純な手術ですが、実は実際にclipをかける操作をしている時間というのは、手術全体の時間に占める割合か…

閉頭

閉頭に焦点を当ててなかった気がするので閉頭についてtipsを交えながら語ってみたいと思います。 とは言え、こちらも例によって施設ごとにかなりやり方に差があるところなので、自分の経験に基づいた話になります。 硬膜内の操作が終わり、術者が止血を確認…

仕事中の装備

久々に更新しようと思ったのですが最近忙しくてあまり重いネタを書く気力もないので、軽く普段仕事中に持ち歩いているものなど紹介してみます。 ・スマホ 調べものやスケジュール管理、pdfリーダーに教科書や論文も入れられるまさに文明の利器。アプリで電子…

脳外科医になるべきか迷っている君へ

先日コメントを頂き、その内容がいかにも以前の自分の悩みと重なったので、同じようなことで悩んでいる人は多いのかな?と思い1本記事にすることにしました。 そのコメントは要約すると 「脳外科に興味はあるけど、勤務きつそうだし本当にやっていけるのか自…

脳外科領域のステロイド

多くの科で色々な使われ方をするステロイド。様々な効果があるので最初は掴みどころがない感じがしますが、脳外科領域では主に脳実質内の血管原性浮腫の治療に使用します。 血管原性浮腫とは何かという話になりますが、代表的には脳腫瘍によってその周囲に発…

勉強の仕方

別に脳外科に限った話ではないんですが。 ある物事について調べたい、勉強したいと思ったときにどうするかという話です。 受験勉強の仕方としても通じるものがある話かと思います。 要点は簡単で、まず全体をなんとなく把握してゲシュタルトを確立してから詳…

術中体位・頭位

脳外科はおそらく、他の外科と比べて、手術室で行う術前の準備が最も大事な科です。 他の科との一番の違いは、他部位(腹部など)と比較して頭部は術野が狭く、術野に現れる構造物の可動性が低い点にあります。すると、ある病変部に辿り着きたい場合、そこへ…

けいれん発作

脳外科の救急外来をやっていると頭痛や麻痺の患者ももちろん来るのですが、意外と多いのがけいれん発作が主訴の患者です。 けいれんの主な原因の1つであるてんかんは若年者と高齢者に多く、特に高齢化に伴い、けいれんで運ばれてくる高齢者が増えている印象…

正常圧水頭症2

色々あって更新が滞っております。 今回は正常圧水頭症の手術について。(普段より多少一般向け) tap testなどにより、髄液を脳脊髄腔から逃がすことで症状が改善するという可能性が高いことが分かれば、基本的にはシャント手術を行います。 一般的な方法と…