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脳外科医の思うこと

20代脳外科レジデントによるブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

創傷治癒について

創傷治癒というテーマで色々考えてみます。

 

創治癒の考え方に関しては、私は夏井睦先生の理論が一番理に適っていると思っているので日ごろ参考にしています。知らない方は調べて一度その理論に耳を傾けてみてください。Web pageに治療例も豊富に載ってます。

まだ毎日創部を消毒とかしてる病院ってあるんですかね。(とちょっと煽ってみる)

 

以降の内容をどう取るかは各自の判断でお願いします。

 

 

創が治癒する条件として、

①創縁の面同士が新鮮な状態である(不良肉芽で覆われていたり間に異物が入っていたりしない)

②ある程度の圧力で密着している状態で十分な期間固定される(その期間はDM、ステロイド使用中など創傷治癒を遅らせる因子があれば長くなる)

③固定されている期間、十分な血流が保たれている(白血球、線維芽細胞が十分量到達している)

④初期の創縁内にいる細菌の絶対数がある基準より少ない(その基準は血流が乏しかったり、異物があれば低くなる その基準より多いと感染が成立し治癒が遅延する)

が挙げられるかと思います。

 

 

これを踏まえた上で、よくある創傷治癒遅延につながりそうな状況とその際の正しいと思われる対応を挙げてみます。

 

・離開創を再縫合する場合

何らかの原因で離開した創は既に不良肉芽で覆われていたりして創面から出血もほとんどしていないような状態であることが多いかと思います。そういった赤みがなく血も通っていなさそうな、元気のない創面同士を接触させてもなかなか治癒しません。

こういう場合は創面をトリミングして新鮮な面を出してからあまり阻血にならないようにバイトとピッチを大き目に取って再縫合し、抜糸までの期間を長めに取ります。

 

・屋外で転倒して出来た挫創を縫合する場合

この場合創内に異物および細菌が多数入り込んでいると考えないといけません。まずキシロカインなどで局所麻酔(創面から注射)し、十分な量の生食で創内を洗います。異物を除去し、細菌の絶対数が減ればOKです。創内の消毒は細胞障害により創の治癒を遅延させるのでしません。そもそも顔面・頭部はもともと血流が豊富なので、ちょっとやそっとでは感染なんて起こりません。腹部と違って頭皮はほとんど動かないので、その状態で創縁をきれいに合わせて縫合さえすれば1週間弱で治ります。抗生剤も不要です。(破傷風トキソイドはまた別の話)

 

・創と創が合流してT字になっている部分を縫合する場合

阻血になりやすいので注意が必要です。T字の部分に不要にテンションがかからないよう、皮膚に余裕が出るよう周囲を上手く縫合して寄せていきます。T字の部分は普段より緩めに縫合するぐらいで良いと思います。

 

術直前の抗生剤投与も細菌の絶対数を減らしたりする意味で重要ですね。

 

 

術後の包交についてですが、基本的には創縁からの出血がなければガーゼで覆ったりもせず放置で良いのだと思います。

本当は被覆材を使って湿潤に保ちたいところなのですが、髪の毛があってなかなかそうもいかないので…。

時々痂疲が創内に出来て治癒の妨げになったりするのでそれは除去したり、汚かったら生食で少し洗ったりしてきれいにしておけばOKです。なんなら入浴して洗髪してもらいましょう。前述の通り毎日消毒などしなくても感染なんてしません。そもそも創を上から消毒したところで一時的に無菌になったとしても直ぐ毛穴から常在菌が出てきて表皮を覆うので無意味です。(むしろ常在菌はバリアーの役も果たすので害しかないかも。)

当然ながらエビデンスもない術後の抗生剤は原則不要です。

 

脳室・脳槽ドレーンが入っていても基本的には考え方は同様です。1日1回の消毒に大きな意味があるとは思えません。痂疲、血餅を除去して清潔を保っておけば十分です。ドレーン刺入部から細菌が入り込んで髄膜炎になりそうな印象があるかと思いますが、それで髄膜炎になった経験はほぼありません。

皮下に入れるドレーンは、術後数日の皮下に貯留する浸出液を排出する意図で入れるものなので排液量をみて少なくなっていれば抜去します。

創下に液が貯留すると創部にテンションがかかって創傷治癒遅延・離開の原因になったり、細菌の繁殖する温床となったりするので、これを防ぐ目的ですね。

 

言い忘れていましたが細菌+dead spaceで感染成立という概念も大事です。例えば腹部から脂肪を採取したりした際に、そのまま皮膚だけ縫うと皮下にdead spaceが生じ、そこに浸出液が溜まって万が一細菌が混入したりすると感染が成立します。

正しい対策としては、

吸収糸で脂肪同士を縫ってdead spaceをなくす

and

ドレーンを入れて浸出液を排出する

となります。(創部が小さければドレーンは不要なこともあります)

浸出液を出しているうちに癒着が起こりdead spaceが減少するのを待つ訳です。

 

 

ドレーンについてはまたこれで一記事書けそうなのでまたの機会に。

 

 

あまりまとまりがなかったですが、以上です。

ではでは。