脳外科医の思うこと

脳外科レジデントによるブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

脳血管造影検査(アンギオ)

血管内治療手技は今や脳神経外科領域においてかなり大きな部分を占める要素となっており、今後脳神経外科医としてやっていくのであればその手技の習得は必須です。

私も脳神経外科専門医を取得したらなるべく早めに血管内治療専門医も取得できるよう症例を集めています。(3年目になったら日本血管内治療学会に入っておきましょうね。正会員歴4年が専門医試験受験条件の1つです。)

 

若手がまず手を出せるようになるのは脳血管造影検査(cerebral angiography、AG、通称アンギオ)でしょう。

アンギオは血管を選択して造影剤を流しながら撮影することで、3D-CTAなどよりも詳しい血行動態や(条件が良ければ)穿通枝ぐらい細い血管まで、精細なデータを得ることが出来ます。

 

差し当たっては1人でアンギオが完遂出来るようになるところが最初の目標になります。

 

 

ちなみに、血管内治療は「何をやっているのか」は直ぐ理解出来るようになりますが、そこから「自分で考えて出来る」になるまでに比較的大きなギャップがあります。これは、いざ自分でやってみるとどのデバイスを選択すれば良いか分からないというのが大きな原因の一つです。

なので、血管内治療を見学する機会や治療に参加する機会があれば、そこで使用された道具はすべて把握するようにしたいところです。(道具の形状と長さ、太さ、メーカーなど)

空き箱を見たり、記録を見れば分かります。使用されるデバイスの種類が掴めて来たら、なぜそのデバイスを使うのか?という視点で術者に質問したりしてみると良いでしょう。

血管内治療は与えられた条件から目的を達成するために戦略を立ててデバイスを選んでいく過程も面白かったりするし、そこの論理的思考が特に大事な分野なので参考になると思います。

 

 

では、実際にどのようにアンギオをするか見ていきます。施設によって色々なやり方があるかと思いますので、例によってご参考までに。

解剖の知識の確認とか、3D-CTAなど事前に撮ってあればその確認などという当たり前のことは省きます。

 

 

①場を整えて消毒

穿刺部の確認、前貼り、汚れ防止のシート、動いてしまう人であれば抑制など、後々困らないように整え、消毒します。必要あれば鎮静も。現施設では大腿動脈からアプローチするので、両側鼠径部を広めに消毒しておきます。右橈骨もしくは上腕動脈からやる施設も多いのではないでしょうか。

 

②ドレーピング、道具を準備

道具の準備は①と平行して進めます。デバイスの水通しなどもさっさとやります。

 

③穿刺位置確認、局所麻酔

透視で「大腿骨頭下縁」をチェックします。このライン上で拍動を触れるポイントが実際の穿刺点になります。この点が大腿動脈が浅と深に分岐する前で表層に近い部分に大体なります。痩せている人であれば一番触れやすいところでも良いのかもしれませんが、太っていて分かりにくい人などでは良い指標になります。(腹部脂肪のせいで変なところにしわがあったりして紛らわしいので。)

局所麻酔は皮膚表層と大腿動脈周囲に十分に撒きます。

 

④動脈穿刺、シース挿入

なるべく貫かずに入れましょう。ワイヤーの走行で蛇行がないかどうか確認し、シースを挿入します。蛇行があり進めるのに抵抗がある時は無理をせずシースを回転させたりしてスムーズに上がる方法を探します。適宜造影も。無理なら対側から。

うちの施設では診断アンギオでは4Fr short sheathを使っています。

 

⑤ガイドワイヤーとカテーテルを大動脈弓まで上げる

シース内にカテーテルを挿入したらガイドワイヤーを先行させて上げていきます。腎動脈、腹腔動脈に迷入することがあるので気を付けるのと、高齢者では腹部大動脈がかなり蛇行していることがあるので注意です。

うちの施設ではカテーテルは4Frの診断用のものを、ガイドワイヤーは0.035inchの一般的な硬さのものを使用しています。

ガイドワイヤーの先が上行大動脈辺りまで来たらカテーテルだけを進めてガイドワイヤーをカテーテルの曲がりの前あたりまで引いておきます。

 

⑥腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈の順に引っ掛けていく

先端が患者の右頭側を向くようにし、上行大動脈からカテーテルを引いていくと引っかかるところが3ヶ所あると思います。目的の血管に引っかかったら少しカテーテルを戻して(押し込んで)その血管内で安定させ、ガイドワイヤーを進め、カテーテルで追従します。

左総頸と左鎖骨下の起始部は見分けが難しく、ガイドワイヤーを進めてみないと分からないことも多いです。

正面で大体問題ないですが、LAO15~30°ぐらいにすると3本の分岐が最も分離して見えるようになります。大動脈弓の走行を考えれば当たり前。

 

⑦総頚動脈まで来たら造影して分岐部を確認

内頸動脈に狭窄がないかなど確認します。正面、側面どちらでも良いですがロードマップにしておくと楽です。

 

⑧ガイドワイヤーを外側後方へ向けて内頸動脈を選択する

正面では外側、側面では後方に分岐する方が内頸動脈です。正面から見ると少し外に膨らんでから上顎歯の辺りで内側に向かい、その後また外に向かうような走行であればOK。少し造影して内頸動脈であることを確認してカテーテル先端は上顎奥歯の辺りに置いて頭蓋内の撮影をします。

追加で、A-comを介したcross flowを確認したいときは、対側の内頸動脈を用手的に圧迫・閉塞した状態で撮影をする「Matas(マタス) test」を行います。バルーンで閉塞させることもあるようですが通常は用手圧迫で問題ありません。

 

これで前方循環はOKとして、後方循環に移ります。

 

⑨どちらの椎骨動脈から造影するか決める

病態にもよりますが、頭蓋内の後方循環を見たいのであればどちらかの椎骨動脈から造影すれば済むので、3D-CTAなど参考にして太い方(dominant側)から造影します。差がなければ左の方が簡単です。(大腿動脈穿刺の場合)

 

⑩椎骨動脈を選択

右:腕頭動脈ではガイドワイヤーの曲がりを下に向け、右総頸動脈分岐部を過ぎたら上後方を向けて進めると椎骨動脈に入ります。

左:左鎖骨下動脈にカテーテルを置いたらガイドワイヤーを上に向けて進めれば大体入ります。分岐が意外と左鎖骨下動脈起始部に近いこともあるので注意。

 

椎骨動脈が鎖骨下動脈から上後方に出ているイメージは持っておきましょう。途中で進まなくなるようであれば筋枝なので引き返しましょう(椎骨動脈の蛇行が強くて上がらない場合もある)。内胸動脈に入ってしまうこともあります。また、血管分岐、カテーテルの角度的にどうしても右腕頭動脈から鎖骨下の方に抜けられず右総頚動脈にガイドワイヤーが進んでしまうこともあります。

椎骨動脈は内頸動脈より細く、攣縮も起こしやすいのでより愛護的に操作する必要があります。

下顎のラインにカテーテル先端を置いて造影します。

こちらも追加でP-comの有無を見たいときは、見たい側の内頸動脈を用手的に圧迫して閉塞させた状態で造影する「Alcock(アルコック) test」を行います。正面だと分かりにくいので側面で撮影します。P-comがあればそれを介して前方循環へ血流が認められます。

 

⑪終了したら最後にシースを抜去して圧迫止血

シースのFr数×3分ぐらいが目安だそうですが、4Fr程度なら10分弱で大体止まります。

圧迫固定して数時間後に安静解除します。8Frとか太目のシースが入っていた場合は止血デバイスが便利です。(圧迫し続ければ手だけでも一応止められます)

 

 

途中造影の後にガイドワイヤーをカテーテル内に入れる前にヘパリン加生食でフラッシュしておくこととか、その際はカテーテルを大動脈弓に降ろしておいた方が良いとか、細かいポイントはいくつもあるのですが網羅しきれませんね。

 

 

とりあえず以上!

専門医試験受けるためにはAG300件必要なんですよね…

今度トラブルシューティング編書きます。