脳外科 resident notes

若手脳外科医による(基本的に)脳外科レジデントのためのブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

腰椎穿刺のコツ2

1からの続き。

 

前回の手順で、ある程度経験を積めば95%は上手くいくと思います。

それでも難しい人は存在するので、以下思いついた腰椎穿刺のトラブルシューティングを挙げてみます。

 

 

・太っていて棘突起がよく分からない

70mmだと足りないことがあるので90mmあるいはそれ以上長い針を使う。針が細すぎると操作性が下がり微妙な調整が難しくなるので21Gなど針を太めにする。胸椎下部と仙椎を触って腰椎の位置を推測する。上下(患者の左右)に針がぶれないよう、垂直な面に沿っていることをいつも以上に気を付ける。

最終的に棘突起間のアタリがつけられないこともありますが、正中さえ外さなければ何とかなるはずです。

 

・血液が出てきた

静脈叢に当たってしまった可能性があるので刺し直す。

そのまま待っていたり、先端の位置を微妙に変えると段々髄液が引けてくることもあります。(静脈叢に当たるということは惜しいところに先端があるということなので。)

ガーゼに垂らしてdouble ring signをみるなどしても良いですが、諦めも肝心です。SAHで血液と見紛うような血性髄液が引けることがあるのでそれも注意しましょう。

 

・患者が足を痛がる

針を進めた際に患者がどちらかの下肢の電撃痛を訴えたら神経根に触っている可能性があるのですぐ針を引く(そのまま進めない)。

正中を穿刺しているつもりでも穿刺点が正中からずれていたり、あるいは背中が傾いていたりして上下(患者の左右)に方向がずれている可能性があります。怪しいときは常に針はゆっくり進めましょう。触れたぐらいなら神経障害は残りません。意識障害がある時は逆に痛がってくれないので注意。

 

棘突起間を通過できない

レベルを変えるか、paramedianから穿刺する。

圧迫骨折があったりして高齢になると棘突起間が癒合したり狭窄したりしてどう頑張っても穿刺出来ないことがあります。全椎体間がダメという訳ではないと信じて上下のレベルにずらしましょう。L5/S1も穿刺出来ることがあります。

正中でダメなら傍正中です。この穿刺方法が必要な人は割といます。まずは本来の穿刺点よりも5mm外側、5mm尾側(ちょいparamedian、略してちょいパラ)からわずかに頭内側を向けて穿刺します。直接椎間孔を狙う訳ですが、イメージが湧かないならやめときましょう。

それでもダメならサイドを変える、レベルをずらす。そこまでしてもダメならもう5mm外側、5mm尾側ぐらいまでずらしても良いかもしれませんが神経根損傷のリスクが上がるのであまりおすすめは出来ません。

 

一度時間をおいて逆側臥位で再挑戦、手を変える(上級医に泣きつく)なども有効です。

 

思いつくトラブルシューティングはこんなところです。

 

 

Spinal drainageの穿刺針(羽つきの太いやつ)も気を付けることは基本的に同じです。

 

針が太くて硬い分、細かい微調整がし易いのである意味普通のSpinal針より簡単と感じる人もいるかもしれません。ただ、棘突起間が狭いとSpinal針は通ってもSpinal drainage穿刺針は通らないというパターンはあり得るので注意です。

 

割と強引に棘突起間をゴリゴリ進めることも可能ですが、その後背中を伸ばした際に棘突起にspinal tubeが挟まれて断裂するということもあり得るようなのでパワープレイのやり過ぎは禁物です。

 

プツッと硬膜を破る感触があったらそこから2mmほど進め、髄液の良好な流出を確認します。(あまり出し過ぎると髄腔が虚脱するので出さないようにする。)

 

ここで流出が微妙だったときが問題になります。先端が髄腔にかかっているのは間違いないと判断すれば、先端をほぼ動かさないようにしつつ微妙に位置を調整してある程度流出が良くなるような場所を探します。流出が微妙でもtubeさえ入ればOKであり、流出の割に意外とtubeがすんなり入ることもあります。

 

その後、穿刺針のベベルが頭側を向いていることを確認してspinal tubeを挿入します。穿刺針の出口のところで抵抗があることがあるので、その際は先端を微妙に動かして抵抗なく入る場所を探します。(少しねじったり、頭側・尾側に倒してみたり、ほんの少し進めたり戻したり) 髄液の出が良ければ(蛇口をひねったように髄液が出てきていれば)大体入ります。

穿刺針の先端を超えてからはtubeだけ引っ張るのは髄腔内で断裂する恐れがあるので原則禁忌ですよ。

 

 

ではでは。