脳外科 resident notes

若手脳外科医による(基本的に)脳外科レジデントのためのブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

clipをかける時のコツ②

 

clipをかけ終わったところから色々トラブルを想定して書いてみます。

 

・母血管あるいは分岐血管が狭窄・kinkしてみえる、分岐血管の血流が弱まっている

これは比較的起こり得る事象です。

まず、本当にclosure lineに沿ってclipがapplyできているか確認します。 というのも、closure lineに沿ったclipであれば理論的に血管に無理はかからないはずなので(動脈瘤ができる前の元の状態に戻るだけなので)kinkは起こりにくいからです。また、血管が十分にfreeになっていないことが原因ということもあるので改めて剥離を追加することも考えます。

それでも狭窄やkinkが起こる場合にはclipを母血管から少し離すような形でapplyします。(neckを引きちぎらないように…)どうしてもdomeに押されて母血管ギリギリにかかってしまう場合は、1本目をtentative clipとしてその真横にapply、その後1本目を外すという手もあります。もしくはtemporary clip、dome clipを利用するとか。

clip前後で分岐血管の流速を計測することで狭窄やkinkがないか確認する手法もあるようです。

 

・domeに血流がある

clipしたはずなのにドップラーで血流がある、もしくはICGでdomeが徐々に染まってくるという、これも割と遭遇する事態です。

dome全体をしっかり確認できていない場合では、clipがdomeと直交する方向にかかっておらず、clip先端がdome先端の方向に向いてしまい、dome clipに近い状態になってしまっていることがあります。clipの先端側、奥側でneckが閉鎖できていない状態です。IC-PCで十分横からの視野、角度が取れない場合などが考えられます。

これは何とかapproach routeを工夫して横からapplyするか、先端の曲がったclipを利用するかしかないでしょう。後者はより穿通枝などを巻き込むリスクが高くなるので注意です。

純粋に長さが足りていない場合は長めのものに変えることも必要かもしれません。

また、domeの石灰化が強い場合にclipで閉鎖し切れていないことも考えられます。ちなみに、このパターンは1)手前に石灰化が強く奥側が閉鎖できていない場合と、2)奥側の石灰化が強く手前が閉鎖できていない場合の2パターンに大きく分けられます。

この2パターンを見分けるのは難しいかもしれませんが、理論的には1)の場合は横に有窓clipをもう1本石灰化部をとばしてapplyする、2)の場合は横にclipをもう1本石灰化部の手前まで、浅めにapplyする、で閉鎖できるはずです。

本当に石灰化が強い場合には真横に同じclipをapplyしても結局変わらないと思われるのでこのようなclipが必要となります。

あるいは、ブースターclipを追加する方法があります。これなら純粋に閉鎖力をupして石灰化もつぶせるのでどこが閉じていないかなど考慮する必要は関係ありません。

 

・穿通枝を噛んでいる

すぐclipを外して穿通枝を避けながらapplyし直すしかないですね、当たり前ですが。剥離が足りなければ追加、clip時にどうしても邪魔になる場合は何か止血剤的なものを入れて構造を予め偏移させて押さえておくなどといった方法も考えられます。

 

 

他、思いついたら追記します。