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脳外科医の思うこと

20代脳外科レジデントによるブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

前頭側頭開頭のコツ(two layer)

間が空いてしまいましたが、two layer編。

 

two layerのtwoとは、①皮膚(+皮下組織、帽状腱膜)と②側頭筋のことです。

これらが一枚の皮弁になっていると嵩張って邪魔なので(特に頭蓋底に近い部分の操作が必要になる際などに顕著に邪魔)、①と②を間の疎な結合組織の層で分けることで2枚おろしにします。

これにより、①を前下方、②を後下方に翻転して、よりworking spaceを確保しようという訳です。

 

後ほど詳しく書いてみますが、ここでone layerでは問題にならなかった顔面神経前頭枝の温存という課題が出てきます。

 

顔面神経前頭枝を傷づけると眉毛が挙上できず、額のしわ寄せもできなくなります。時間が経つと良くなることもあるようですが、目立つので出来る限り避けたい合併症です。

側頭筋筋膜やinterfacial fat pad、顔面神経前頭枝の走行についてもう一度確認しておきましょう。

(おすすめ文献:Preservation of the nerves to the frontalis muscle during pterional craniotomy. - PubMed - NCBI

 

 

では具体的な手順を見ていきましょう。

 

 

まず皮膚切開を骨膜まで深くせずに、疎な結合組織の層まで(上側頭線より下では側頭筋筋膜まで、上側頭線より上では骨膜まで)にします。

 

翻転する側の皮膚を鉤ピンなどでぐっと持ち上げると疎な結合組織が見えるので、これをメスの腹で切開していきます。(気持ちがいいです。)

 

メスの使い方のコツとして、メスの腹で表面をなでるような動き(魚のうろこを落とす時のような動き)を入れると作業効率が良くなる場面があります。

 

気持ちよく疎な結合組織を切りながら、眼窩外側からの距離を気にします。

 

顔面神経前頭枝は、頬骨弓の方から上がってきて、眼窩上外側を、上側頭線より下では側頭筋筋膜浅層のレベル、上側頭線より上では骨膜のレベルで走行して前頭筋に至り、支配しています。

 

眼窩上外側縁から2-3横指(約4㎝)より離れては走行していないので、疎な結合組織を切開して眼窩縁よりこれぐらいの距離まで近づいたら、より深層に入る必要があります。

 

上側頭線より下(側頭筋の表層)では、側頭筋筋膜浅層のみを切開して側頭筋筋膜浅層と深層の間にある脂肪層に入ります。

痩せている人だとこの脂肪層が発達しておらず分かりづらいこともあり、さらに眼窩外側から離れすぎているとこの脂肪層が薄いために分かりづらいことがあります。

分かりづらい場合は側頭筋筋膜深層も切開して側頭筋の筋体を露出してしまってもOKです。やや見た目は汚くなりますが、神経温存という観点ではより安全です。

 

上側頭線より上では骨膜を切開して骨を露出させます。

 

上側頭線の線上では側頭筋筋膜と骨膜が骨に癒着していますが、これも骨から剥離して、側頭筋筋膜浅層と骨膜が1層の膜として連続するように剥離して翻転していきます。

(顔面神経前頭枝は一部上側頭線を乗り越えて前頭筋に入っているため)

 

この層に上手く入ることが出来れば、顔面神経前頭枝は翻転する皮弁側にめくられていくので、損傷することはなくなります。

 

上側頭線基部、眼窩外側の頬骨弓基部が露出するまで翻転すればOKです。皮弁はフックなどで前下方に引っ張っておきます。

(ちなみに、この側頭筋筋膜間の脂肪層をずっと尾側まで進んでいくと、頬骨弓が露出できます。orbital zygomatic approachの際など必要な知識。)

 

次に、残った側頭筋を切開して翻転します。上側頭線の側頭筋筋膜付着部を、閉頭の際に側頭筋筋膜を縫い付けるのりしろとして残すことが多いかと思います。

側頭筋を骨から剥離する際は尾側から剥がした方が損傷が少なくなります。

側頭筋は後下方にこちらもフックなどで引いておきます。

 

 

後はone layerと同様です。以上!

 

 

 

余談ですが…

基本的にこのブログの記事は当直の暇な時間に書いてます。(もちろんちゃんと仕事もしてます。)

明日は当直明けですがコングレス@大阪に参加予定です。教育セミナーが楽しみ。

ハンズオンセミナーのメディカルイラストレーションコース、取ろうか迷っているうちに定員が埋まってしまったのが心残りです。