脳外科医の思うこと

脳外科レジデントによるブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

手術上達の道1

手術は基本的に術者と助手という役割分担で行われます。

経験の浅いうちは、上級医が術者で自分は助手として手術に入ることの方が必然的に多くなります。

 

ところが、ある日突然「じゃあ今日はお前術者やってみるか。」と言われ術者が降ってくるという状況が発生します。

もちろん予定手術で事前に術者として指名されるという場面もあると思いますが、脳外科は緊急手術が多いので、こういった状況が自然と発生しやすいという特徴があります。

 

当然ながら、何の準備もなく突然術者を任されたとしても、全く使い物にならなければ術者を交代させられてしまうばかりか「あいつはまだまだ駄目だ」という評価を付けられ、次のチャンスが回ってくるのはしばらく先…ということになりかねません。

急に術者が回ってきたので…」という言い訳は通じないのです。

 

逆にそこでしっかりと期待されたパフォーマンスが発揮できれば、また同じ場面が来た時により信頼をもって任されますし、よりレベルの高いことにも挑戦させてもらえるという好循環が生まれます。

 

要するに、普段からの準備・心構え次第で、いざ術者を任されたときに結果を出せるか出せないかが決まってくる訳です。

 

今回はそういったチャンスをモノにしていくために、「いずれ術者となることを踏まえた上で普段から何を意識すべきか」ということを考えてみます。

 (ちなみに、実体験に基づいたもので、私自身3年目でクリッピングをやらせてもらい、1回目でクリップまでいけたという点でそこそこの信憑性はある内容だと思います。)

 

 

 ① 術野の外で練習できることは練習しておく

特に最初は「糸結び」と「縫合」です。

当たり前すぎです。外科の基本中の基本であるこの2つを疎かにしている者が手術が上手いわけありません。そして、この2つが出来ていない者に他のことをやらせようとも思われません。

練習と実際術野でやるのとでは環境が違うため、いざ術野でやってみると上手くいかないということも当然ありますが、それも反復練習が背景にあればすぐ対応できると思います。

糸結びも縫合もかなり奥が深いので、そのうちそれぞれ語ってみたいところです。

(縫合に関しては形成外科の教科書が非常に参考になります。)

 

後はマイクロ顕微鏡下の操作について。

これも絶対的に慣れが必要です。練習用のものがあれば(大学の医局には大抵あると思いますが…)積極的にガーゼを縫ってみたり人工血管を縫合してみたりと練習しましょう。私は自分の練習用卓上顕微鏡を持っています。

術中に術者のポジションで操作できるチャンスがあれば積極的に色々やってみて感覚を掴むと良いと思います。(もちろん危険なことはしないように。)

意外と盲点となるのが顕微鏡のフットスイッチです。どこに何のスイッチがあるのか直ぐにイメージ出来ますか?出来ないようであれば直ぐにフットスイッチを確認してどこを踏むとどういう挙動をするのかイメージトレーニングをしておきましょう。これも術野の外で出来ますよね。

 

 

② 助手をしながら道具の使い方に習熟する

特に大事なのは脳外科手術の肝、「吸引管」です。

助手をしながら、「正しい持ち方」「親指での吸引力の調整」を常に意識します。これは一朝一夕には出来ません。自転車の練習と同じで、とにかく正しい使い方を意識することを常に心掛けることで、徐々に意識せずとも適切に使えるようになります。小脳による学習ですね。

吸引管もかなり奥が深いのですが、ポイントは「原則親指、人差し指、中指の3本で、それぞれの指を伸ばし気味にして支える(指を丸めない)」「力は出来る限り抜く(最初は力が入りがちで疲れる)」「術野に出し入れする時は吸引しない」などです。

絶対いきなり完璧には出来ません。助手をしながらこっそり練習しましょう。

 

 

③ 上手い術者をよく見て良いところを盗む

手術が出来るようになる一番の近道は上手い人の真似をすることです。

自己流やオリジナリティを発揮するのは専門医になってからでいいと思います。若手のうちはどんどん師事する上級医が変わると思うので、その都度その先生の上手い部分の真似をしましょう。

理解できない部分があれば積極的に質問すべきです。(「なぜそうするのか」「どうしてこうしないのか」など。) 経験を積んだ先生であればそれぞれ手術哲学があると思うので、表面上だけでなく原理のような部分から理解するようにすると応用が効きます。

細かいところでは体位の取り方や術者自身の姿勢、道具の選択なども参考になるところです。

今は良い時代になったもので、You tubeに手術動画・手術解説動画が何百と転がっています。これをひたすら観るのもなかなか面白いです。徐々に上手い、そうでもないというのが分かるようになってきます。手術に関するセンスが磨かれるような気がします。

 

 

④ 予習・実践・復習をする

漫然と惰性で手術に参加するのはもったいない、ということです。

理想は

手術に関して、体位や皮切など全て自分なりにシミュレーションする → 何かテーマをもって助手をする(吸引管の持ち方を気を付ける、術者の姿勢を注意してみる、など) → 術前のシミュレーションと違った部分を術者に質問する、テーマに関して上手くいかなかった部分などを反省・考察する

といった感じでしょうか。

 

自分で言っておいてなんですが、意識が高すぎて毎回完璧にやるのはキツいと思うので、その辺は適度に調整しましょう。

どうも偉そうな口調になってしまっているのですが、私も至らない点が多々あるということは日ごろから痛いほどに自覚しています。共に日々反省しながら、あくまでも効率的に精進しましょう。

 

 

長くなったのでこの辺で。