脳外科医の思うこと

脳外科レジデントによるブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

点滴のルート確保のコツ(追記あり)

ルートだのラインだのと言われる点滴用静脈路を確保する手技の話です。

 

流石に普通のやり方を解説してもしょうがないので、難しい人のルートを取るときに気を付けていることを挙げてみます。(看護師さんに「先生、ラインが取れないんでお願いします」と言われたときを想定。)

 

 

まあ難しいパターンというのは大体①静脈が見つからない、②すぐに漏れる(皮下血腫になる)のどちらかでしょう。

 

 

①静脈が見つからないと言われた場合

以前も言いましたが体位が大事です。

まずベッドコントローラーで患者の上体をある程度起こします。完全にflatよりも経験上静脈が出やすくなります。(ベッドの下に腕を降ろしてブラブラしてもらうこともあります。とにかく刺す前の環境を整える。)

次に上腕を適切な強さで縛って駆血します。自分の腕を押さえてみればわかると思いますが大事なのは内側面で、強さはそんなに要りません。袖が邪魔だと思ったら捲り上げるか何なら服を片腕脱いでもらいましょう。

その後、手を握ったり開いたりしてもらったり、世間話などして少し待ちます。ぺしぺしと腕を叩いたりしている人がいますが、叩いて出てくるというのは多分勘違いで、叩かなくても単に待っていれば静脈は膨らんできます。

ある程度待ったら触診します。見た目よりもぷにぷにとした感触の方を重視します。良い感触の血管がなかったらしょうがないので目視できる血管も候補に入れます。

「血管がない」と言われた割にこの時点で普通に刺せそうな部分が見つかることが多いです。橈骨遠位端の辺りとか(橈骨神経麻痺の可能性があるから刺す時は注意!)、正中皮静脈の少し遠位の辺り、あと見落としがちなのが尺側かつ手背側の辺りなど。とにかく満遍なく探り、一番コンディションの良い部分を探します。

それでも無かったら、反対側で同じことをします。経験上、両腕しっかり探せば1か所ぐらいは良い血管が見つかる可能性が高いです。

困ったら手背の静脈もありです。手を使いにくくさせてしまうし刺すと痛いのであまり積極的には選択しませんが。

脱水の可能性があれば、それを何らかの手段で補正してから再度チャレンジしましょう。(脱水の補正のためにルートが必要、ということが多いとは思いますが。)

全然血管が見つからなくて絶望的かと思われた人が、食後に再チャレンジしてみるとびっくりするほど簡単に血管が見つかったりします。(食後30分でもう全然違います。)

後は下肢も探してみる価値はあります。浮腫んでいたり太り気味だと見つからないことが多いですが、足背や外果・内果近傍に良い血管がある人がいます。

後は効果は薄い印象ですが、温めるとか。

 

 

②血管がもろくてすぐ漏れますと言われた場合

基本的には上記と同様の工程で穿刺点を決めます。

駆血はより弱めにした方が良いように思います。壁が薄くてもろい血管がパンパンになっていると、針が刺さった瞬間に破裂するように皮下血腫が出来るパターンがあります(多分)。

ところが、駆血が弱すぎて(あるいは脱水が高度だったりして)静脈の内腔が虚脱していると、針進めていく段階で静脈の表層側の壁が押されて深層側の壁にくっついてしまい、表層側の壁を貫くと同時に深層側の壁も貫いてしまうというパターンも考えられます。適度に駆血しましょう。

サーフロー針ですが、プライドを捨てて極力細いものにします。(24Gとか。)ショックバイタルや輸血で短時間に大量に補液するというのでなければ基本24Gで事足ります。

皮膚に軽くテンションをかけ(強すぎると血管がつぶれ貫通しやすくなる)、普段より浅い角度で穿刺します。皮膚と平行ぐらいのイメージで良いかもしれません。皮下に入ったらとにかくゆっくり針を進めるようにします。

血管が逃げた時は、その逃げた方向の逆にべベルを向けるよう針を回転させ、より水平に近い角度で進めると入ることがあります。(分かりづらいと思いますが…逃げた血管の側面から刺すイメージです。)

貫くとアウトなので、内筒に逆血がきたらより水平に近づけてゆっくり進めます。少し持ち上げるような感じにすると良いかもしれません。(静脈の表層側の壁を持ち上げつつ内腔を確保して進めるイメージ。)

外筒に逆血がきたらそこで内筒を進めるのを止め、外筒をゆっくり進めます。血管がもろい人は「外筒に逆血がきたら寝かせて1-2mm進める」という工程で大体血管を貫くので(多分)、これを省きます。この際に意地でも内筒の位置が変わらないように気を付けます。外筒を押すときに内筒も少し動いてしまっていることが多いので全力で注意しましょう。

静脈を貫いた後に外筒だけにして点滴を繋いでしまい、徐々に引き戻して点滴がスムーズに落下するところで外筒を回転させながら押し込む、という方法もありますが、一度貫いているとどうもその後そのルートは長持ちしない印象です。

 

基本ルート確保は難しい人ばかりが回ってきますが、個人的にはこれでルートキープは全体として90%以上の成功率を維持できていると思います。

 

 

ただ、色々と全力を尽くしてもルート確保できない人はいます。高度の浮腫、長期ステロイド内服、長期抗がん剤治療後、極度脱水、重症肥満などなど。

刺しまくって皮下血腫だらけにするのも可哀そうなので、そういう場合はさっさとCVにしましょう。

 

CV編に続く。

 

 

 

<2016/4/9 追記>

 

新年度になりこの記事のアクセス数が伸びているということは、ルートが取れなくて(あるいは今後取ることになりそうで)困っている新人の方々が見てくれているということなのでしょう。

ひとつ言えることは、最初は誰でも失敗するということ、数をこなせば誰でも上達するということです。

ただし、その上手くなるまでの間、無駄に痛い思いをするのは患者さんです。

とにかく1回tryしたらその後どこが悪かったか、あるいはどうして上手くいったのかを毎回考えるようにして、少ない回数で上手くなるように心がけましょう。漫然と失敗を繰り返すのが最悪です。1回失敗したら次はここをこうしてみよう、など改善点をもって次に臨んでください。

とは言えやはり上手くなるにはある程度の回数は必要なので、ルートを取る機会があれば積極的に刺しに行きましょう。

特に最初のうちはそもそも針の扱いになれていなかったり(これは実際のものを触って事前に慣れておくべき)、患者さんの目が気になって緊張したりなど色々な要素からも失敗しがちなので、例えば意識がはっきりしていないような人でチャンスがあれば是非モノにすべきです。

(逆に言うと、「絶対に失敗しないでよ」とか言ってくる人はトラブルになる可能性があるので、上手い人に頼みましょう。リスクマネジメント大事です。)

後は、自分の頭の中にしっかり針と血管のモデルを作ってシミュレーション(イメージトレーニング)することも大切。頭の中で具体的にイメージも出来ないのであれば高い成功率は見込めません。

精一杯試行錯誤して、職場の人にも色々アドバイスを貰ったり練習台になってもらったりしながら、頑張ってください!

 

 

<2016/6/22 さらに追記>

 

最近気づいた、もう一つ大事なコツとして、「針を進める力(押し込む力)を最後まで緩めない」があります。

例えば、針を進めていて内筒→外筒の順に逆血が来て、そこで力を緩めて一旦落ち着いてから外筒を進めようとすると上手くいかないことが多いです。

どういうことかと言うと、力を緩めた瞬間に針が(皮膚や皮下組織の抵抗で)ほんの少し押し戻されて、せっかく捉えていた血管内腔から抜けてしまっているのですね。

常に押し込む力を一定にかけながら外筒を進めるようにしてみてください。片手で出来るのがベストです。親指と中指で持って人差し指で外筒を押し込むようにする等、持ち方を工夫してみてください。頑張って!