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脳外科医の思うこと

20代脳外科レジデントによるブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

腰椎穿刺のコツ1

腰椎穿刺、一般的にルンバール(lumbar puncture)と呼ばれている検査です。

腰背部から腰椎の隙間を縫って脊柱管を穿刺し、髄液を採取しようというのがその目的です。

今回は腰椎穿刺のコツ、もう少し広げてSpinal drainageのコツを実体験から紹介してみようと思います。

 

基本的に両者とも気を付けるべき点の多くは共通しているので、まずはそこから。

 

0. 解剖の知識を入れておく (画像チェック)

当たり前ですね。イメージがついているのとついていないのでは大違いです。blindの操作なのに皮膚の下がどうなっているのか分からないのでは危険過ぎます。(特に神経根の位置と棘突起の構造。)最低限の構造は把握しておきましょう。

神経根損傷は一番避けなければならない合併症です。

また、腰椎のレントゲン2方向があればそれもチェックし、腰椎棘突起間の広さをみて通りやすそうなレベルを把握しておきます。側弯がないかどうかも要チェック。

 

1. 体位

いずれ同じようにコツシリーズとして書いてみようと思っているラインキープ、CV穿刺などと共通しますが、手技の成功率というのはその手技を始める前の段階で大部分が決まっています

手術は言うまでもないですが、いわゆる「刺しもの」と呼ばれるこういった検査でも体位は疎かにはできません。特に腰椎穿刺の成功率は体位に依る部分が大きいので、こだわりましょう。

 

右側臥位か左側臥位かについてはどちらでもいいと思います。右利きだと左側臥位の方がやりやすいような気が若干しますが…慣れないうちはどちらかに統一しましょう。

 

まずベッドか自分の座る椅子の高さを調節し、自分の腹~胸の前ぐらいの高さで穿刺が出来るようにします。(やり易い高さには個人差があるとは思います。)後にも述べますが、腰背部に対して刺さっている角度が重要なので、その目測が付きやすい高さが良い、ということです。高過ぎたり低過ぎたりすると自分の穿刺している方向が客観的に把握しづらくなります。

背中の位置ですが、自分側のベッドの端から15-20㎝程度にくるようにします。(遠いと穿刺しにくく、近すぎるとworking spaceがなくなるため)

 

次に、棘突起間を広げるために、とにかく背中を丸めます。これは患者の腹側にいる介助者の手腕が重要です。膝・大腿を極力胸・腹の前に押し付け、顔はお腹を見るように言います(枕をそういう位置にずらす)。上側の手はベッド柵をつかませておきます。最初にかなり頑張っても、消毒やドレープなどしている内に緩むのが常なので、穿刺部を触りながら穿刺する直前に「今触っているところを突き出すようにもう一度丸くなってください」などと声をかけましょう。

そうこうしていると大抵の場合腹臥位気味になりがちなので、腰背部の面がベッドに対して垂直になるよう介助者に声をかけて調整します。

 

2. 触診

丸まってもらった上で、とにかく腰の正中と思しき部分を押しまくります。棘突起が触れるはずなので、まずその棘突起の並ぶラインを想定しましょう。腰椎は前湾しているので触れにくいことがありますが、その場合は下部胸椎と仙椎から腰椎の位置を推定し、その上で触診することで分かることが多いと思います。

棘突起のラインを想定したら、そのライン上を頭側から尾側まで押していくことで凹んでいる部分を見つけます。腸骨棘や肋骨との位置関係から穿刺の候補となるL2/3、L/3/4、L4/5を同定します。(ヤコビー線:L4ぐらい、第12肋骨下縁:L2/3ぐらい)

大抵仙骨から辿っていけば分かりますが、はっきり腰椎の番号を同定出来なくても構いません。L3/4だろうがL4/5だろうが、髄液を採取できればいいのです。(L1/2以上は脊髄損傷の恐れがあるからもちろんダメですよ。)一番間が広そうな棘突起間を決めて、そこを爪で「ちょっと痛いですよー」とか言いながらぐりぐり押して十字の跡を付けます。実際はそんな痛くないですし、消毒などしてもしばらくマーカーとして残るのでおすすめです。

触診は本当に大事です。いけそうだ、という確信が生まれるまで触りましょう。同時に、穿刺順も決めておきましょう(L3/4、ダメだったらL2/3、L4/5の順など)。

 

穿刺部周囲をアルコール綿でゴシゴシ擦って物理的にきれいにしたのち、クロルヘキシジンで広めに消毒し(イソジン不要)、滅菌手袋をつけて穴あきドレープを貼り、局所麻酔をして場を作ります。

 

3. 穿刺

通常であれば70mm、22Gぐらいのルンバール針で良いと思います。採取量が多いときは21Gにしたり、深そうであれば90mmにしたり。

重要なポイントは、「棘突起のラインを通り、腰背部の面と直行する面」の上で勝負することです。棘突起ライン上の穿刺点を変えたり、頭側・尾側に穿刺方向を変えたりすることはあっても、上下(患者の右左)方向に針を動かすことは原則しません。こうすることで棘突起間を抜けることのみに尽力すれば良いことになります。また、神経根を損傷するリスクも理論上ありません。3次元ではなく2次元の勝負に持ち込むことが肝要というわけです。背中が傾いていたりするとこの面からずれてしまうことが多いので、常に注意しましょう。

後は、一番凹んでいるところから垂直に穿刺 → 骨に当たったら皮膚直下まで戻して頭側か尾側にわずかに向きを変えて穿刺 → 色々試してもダメだったら穿刺点を頭側か尾側に少しずらす(棘突起間はやや尾側を向いていることが多いので、やや尾側にずらすのがおすすめ) → … の繰り返しでいつかは棘突起をくぐり抜けられるはずです。面上に乗っていれば、その先にあるのは脊柱管です。

 

4. 深さ

皮下脂肪の厚さや画像から大体の深さの目安を立てておきます。「プツッ」と硬膜を破る感覚があればベストですが、分からないこともあります。深さの感覚は経験に依るところが大きいかもしれません。皮下脂肪の多い人だと70mmの針が全部入るぐらい深いところで当たることもあります。通常は4-6㎝ぐらいかなという感覚です。先述した面の上で勝負できていれば、脊柱管を貫通すると椎体の骨に当たることになります。棘突起はくぐり抜けたと思われる深い位置で骨に当たった場合は、そこから内筒を抜いて戻ってくる、というのもややイレギュラーですがやることがあります。

 

最後針を抜くときは内筒を戻してから抜いたほうが余分な髄液漏れが少ないそうです。tap testなど逆に漏れてもいい時はあえて内筒を戻さずそのまま抜きます。

 

 

長くなってきたので2へ続く…