鋭匙の使い方
道具シリーズその②、鋭匙(えいひ)の使い方、コツについて。
意外と上手く使えていない人がいるような気がします。
鋭匙の性能をフルに発揮すれば、1-2mm硬膜が見える穴が開いているだけで内板がほとんど残っていても、きれいなBurr holeまで広げることが可能です。
一度使い方を確認しておきましょう。
鋭匙はエッジの鋭いアイスクリームスクープ(アイスを半球型にすくうやつ)のような形をした道具で、先端のお玉の部分の長さは5-10mm前後が多いかと思います。
Burr holeを手回しドリル・電導ドリルであけた後、薄く残った内板の皮質骨を除去するのに使います。
他はほとんど出番がないというニッチな道具ですが、逆に穿頭・開頭で必ず使う道具でもあります。
コツはとにかく鋭匙の先端ではなく側面を使って削ることです。(先端を使った場合下手すると鋭匙が折れます。)
これは誰しもが最初注意されることなのですが、理屈では分かっていても意外と上手く使えないものです。
実のところ、電動ドリルの場合は本当に薄い骨しか残らないので、鋭匙の使い方がまずくても大きな問題は起こりません。(適当にやってもあの薄い骨は取れるので)
手回しドリルを使った際や、何らかの原因で厚めに骨が残った際に鋭匙がちゃんと使えているかどうかの差が生まれます。
きちんと上手く使えているかどうかの判断は簡単で、1ストロークごとに骨が削れ、線状の骨が次々と出てくればOKです。ガリガリいうだけで一向に削れず、見てる人がイライラするようではまだコツが掴めていません。
よくまずい使い方として見るのは、鋭匙の横で骨を上からカリカリこすっているだけという場面です。骨の硬さによっても話は変わりますが、硬めの骨の人だとそれでは一向にBurr holeが広がらず、時間を無駄にすることになります。しかも疲れます。
ポイントは鋭匙の側面を使って、「下から斜め上に削ること」です。上から押し付けて削っても、相当骨の柔らかい人でない限りはまず削れません。(しかも力の向き的に危ない)
個人的には、鋭匙をまず硬膜と骨の間に少し入れるようにしてから、骨に押し付けつつ回転させるというのを意識するようになってから上手く削れるようになったように思います。もちろん、突っ込みすぎると無駄に硬膜外腔を広げることになるので、最小限に留めましょう。最低でも鋭匙の横の部分が骨の下に入っていれば、そこから鋭匙を回せば削れます。
後は、とにかくこまめに立ち位置を変えること。道具の性質上、Burr holeを時計に見立てると5-6時ぐらいの手前の部分の骨は無理しないと削れません。しなくてもいい無理はしない方がスマートです。
基本は両手で持った方がやりやすいので、出血などある場合は助手に吸引をお願いしましょう。慣れれば片手でも削れます。
こんなところでしょうか。
細かい話ですが、こういった道具の使い方ひとつでも上級医は「こいつはできる or できない」を判断していると思います。脳外に限らず、外科系の研修はいかに信頼を積み重ねてチャンスをもらえるか、そしてそれをモノに出来るかです。
そういった話もいずれできればと思います。
では。