脳外科 resident notes

若手脳外科医による(基本的に)脳外科レジデントのためのブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

バイポーラの使い方

道具シリーズその①、バイポーラについて。使う際のコツなどをまとめてみます。

 

バイポーラ(bipolar、通称バイポ)はピンセットのような形をした道具で、先端の金属部分の間を通電させることで対象を凝固(蛋白変性)させるのが主なはたらきです。血管や組織を焼いて止血するのに使います。

 

電気を流してその電気の通った部分が焼けるという仕組みなので、先端の電極同士がくっついてしまっていると機能しません。「ギュッと挟むのではなく、対象の両脇に置く」というイメージです。(最初に口うるさく言われます)

もちろん電極同士が離れすぎていても焼けませんし、全くdryな状態でも電気が流れにくいので焼けません。水をかけたりしてある程度wetにする必要があります。

 

焼きたい部分の面積に応じて、バイポーラを立てて使ったり(ピンポイントに焼く)、寝かせて使ったり(広く焼く)します。

 

上手い人は適切な幅を作って対象に当ててジュッと焼く、といった感じでやっていると思います。段々狭めて焼き縮めるように使ったりもします。必要以上に力強く挟み込む必要はありません。もちろん、硬膜断端を焼く際などある程度の力で挟むのが必要な場面もありますが。

 

出力を好みの強さに設定できますが、個人的には頭蓋外では35-40(マリス単位)、頭蓋内では15-25ぐらいで使っています。

(追記: 最近頭蓋外では60が良いような気がしています。高出力で短時間で焼く方が早いし慣れれば逆に安全かなと。状況次第ですが。)

 

稀に、いざ焼こうとするとケーブルの接触不良で電気が流れず焼けなかったりするので、毎回手術開始前にドレープの上に水を垂らして(局麻の水滴でも良い)それを焼いて確認することにしてます。(フットスイッチの位置確認という意味もある)

 

また流派によるかもしれませんが、シルビウス裂を開ける際のマイクロ操作でイリゲーションバイポーラ(水も出せるバイポーラ)を主に使うこともあります。

今の施設では左手吸引管+右手イリゲーションバイポーラか、左手吸引管+右手マイクロ剪刀の持ち替えでやっています。先端のあまり尖っていないバイポーラは、SAHなどで血腫の中に入っていくときに比較的安心感があるので使いやすいです。(個人的にはイリゲーションサクションとマイクロ剪刀のみの方が早くてカッコいいし合理的な気がする)

(追記:断然マイクロ剪刀(上山剪刀)+イリゲーションサクションだと思います。常に。)

 

そんなこんなで止血には欠かせないバイポーラですが、何よりも大事なのは出血点をしっかり露出することだったりします。やみくもに焼くのはご法度で、水とセルシートを上手く使って出血の上流を探り、出血点を同定してから焼きましょう。凝固反応は不可逆ですからね。

脳内血腫除去のオペなど、出血しているように見える場所をいくら焼いても止まらない時は実際の出血点がより深くに隠れていることがあります。

そもそも、動脈性でなければ、(特に凝固がリスキーな部分であれば)深追いせずにセルシートや止血剤をあてておいて次の操作に移るのもありです。

 

では。