脳外科 resident notes

若手脳外科医による(基本的に)脳外科レジデントのためのブログ。病気のことや手術のことについて語ります。

正常圧水頭症1

未だ触れていなかった特発性正常圧水頭症(iNPH:idiopathic normal pressure hydrocephalus)について。 最近知名度が上がり、紹介で外来に来ることも多くなった特発性正常圧水頭症。 意外と病態は分かっていないことが多いです。(脳脊髄液循環がそもそも…

創傷治癒について

創傷治癒というテーマで色々考えてみます。 創治癒の考え方に関しては、私は夏井睦先生の理論が一番理に適っていると思っているので日ごろ参考にしています。知らない方は調べて一度その理論に耳を傾けてみてください。Web pageに治療例も豊富に載ってます。…

脳血管造影検査(アンギオ、DSA)

血管内治療手技は今や脳神経外科領域においてかなり大きな部分を占める要素となっており、今後脳神経外科医としてやっていくのであればその手技の習得は必須です。 私も脳神経外科専門医を取得したらなるべく早めに血管内治療専門医も取得できるよう症例を集…

止血のコツ

止血は手術の流れの中で大事な要素を占めるものであり、手術は止血に始まり止血に終わると言っても過言ではありません。(多分) 手術の本質ではありませんが、適切な止血は視野を改善し、出血量を抑え、手術時間を縮め、合併症発生率を下げることで手術全体…

マイクロ顕微鏡と一眼レフカメラ

去年あたりのStrokeでも聞いた話なので完全なオリジナルネタではないのですが… 自分の趣味の一つにデジタル一眼レフカメラがあります。 ズームレンズであれば焦点距離を調整して画角を変え、対象にピントを合わせるわけですが、この辺はマイクロ顕微鏡も原理…

上手い手術の条件

手術が上手い人とは、という資質の話とはまた違います。 上手い手術が行われるためには何が必要かを考えてみます。 完全に自論ですが。 ・手術に関連する解剖の知識 必須事項。 ・十分な術前検査と方針の検討 見切り発車では毎回確実に100%の手術を達成する…

前頭側頭開頭のコツ(two layer)

間が空いてしまいましたが、two layer編。 two layerのtwoとは、①皮膚(+皮下組織、帽状腱膜)と②側頭筋のことです。 これらが一枚の皮弁になっていると嵩張って邪魔なので(特に頭蓋底に近い部分の操作が必要になる際などに顕著に邪魔)、①と②を間の疎な結…

前頭側頭開頭のコツ(one layer)

前頭側頭開頭は、最も脳外科手術で頻用される開頭方法のひとつです。 その名の通り前頭側頭部、いわゆるこめかみの辺りに骨窓を設けることで、シルビウス裂および前頭葉下面、側頭葉先端部辺りを露出させ、病変に到達することを目的とします。 この開頭によ…

糸結びのコツ

緩まない糸結びのコツを考えてみます。 まず、そもそもなぜ緩むのか? 原因は2種類に分類できると思います。 ①縫合で寄せようとしている1対の組織に離れようとするテンションがかかっているから 頭皮を縫合する時など、翻転した皮弁が少し縮んで創縁同士が寄…

後頭下筋群の解剖まとめ

現状実際に目にする機会が少ないこともあって時間が経つと忘れがちな後頭下の筋群。 自分用のメモという意味も含めてまとめてみます。 前提として、出てくる最低限のkey wordを理解しておきましょう。 上項線:superior nuchal line 下項線:inferior nuchal…

穿頭ドリルの使い方

開頭・穿頭に不可欠な穿頭用のドリルについて。 頭部の手術においてはほぼ必ず登場し、慣れるまでは冷や汗が止まらないアレです。 原始的な手回しドリルと電気もしくは空気圧を利用した機械式ドリルがありますのでその両方について考えてみます。 ①手回しド…

ふるさと納税のすすめ

番外編。 先日確定申告を済ませました。 2015年は職場を異動することがなかったので本来ならば確定申告は不要でしたが、ふるさと納税のためだけに確定申告をしたのです。 ふるさと納税をやっていない人に話を聞くと、大抵、 「ふるさと納税がお得だっていう…

血腫除去術1 皮質下出血

市中病院にいると多く経験することになる手術の一つ、脳内出血に対する開頭血腫除去術。(他は慢性硬膜下血腫に対する穿頭血腫洗浄ドレナージ術、水頭症に対するL-PもしくはV-Pシャント術あたりがtop3でしょうか。) 特に皮質下出血はapproachも(被殻出血に…

手術上達の道1

手術は基本的に術者と助手という役割分担で行われます。 経験の浅いうちは、上級医が術者で自分は助手として手術に入ることの方が必然的に多くなります。 ところが、ある日突然「じゃあ今日はお前術者やってみるか。」と言われ術者が降ってくるという状況が…

CV穿刺のコツ

末梢点滴のライン確保が難しい場合、いつ今のラインがダメになるか…というストレスから解放してくれる頼もしい存在、それがCV(central venous、中心静脈)ラインです。 中心静脈栄養をしたい場合にも使います。(むしろこっちがメインですかね。脳外科入院…

点滴のルート確保のコツ(追記あり)

ルートだのラインだのと言われる点滴用静脈路を確保する手技の話です。 流石に普通のやり方を解説してもしょうがないので、難しい人のルートを取るときに気を付けていることを挙げてみます。(看護師さんに「先生、ラインが取れないんでお願いします」と言わ…

腰椎穿刺のコツ2

1からの続き。 前回の手順で、ある程度経験を積めば95%は上手くいくと思います。 それでも難しい人は存在するので、以下思いついた腰椎穿刺のトラブルシューティングを挙げてみます。 ・太っていて棘突起がよく分からない 70mmだと足りないことがあるので90…

腰椎穿刺のコツ1

腰椎穿刺、一般的にルンバール(lumbar puncture)と呼ばれている検査です。 腰背部から腰椎の隙間を縫って脊柱管を穿刺し、髄液を採取しようというのがその目的です。 今回は腰椎穿刺のコツ、もう少し広げてSpinal drainageのコツを実体験から紹介してみよ…

脳症・脳炎

脳症と言われても以前はピンと来なかったのですが、何例か経験してぼんやりとはいえ頭の中にゲシュタルトが出来てきたので、自分なりの解釈を述べてみます。 まだピンと来ていない人向けに、脳症患者のイメージを頭の中に作る一助となれば幸いです。 脳症患…

脳外科医になるとして、まず何を勉強すべきか

脳外科医を志した時から脳外科医としてのキャリアは始まります。 それが初期研修中なのか学生時代なのか、はたまたもっと前なのかは分かりません。が、脳外科医になる前(医師3年目になる前)から準備、つまり脳外科の勉強は始めておこうと思う人が多いでし…

鋭匙の使い方

道具シリーズその②、鋭匙(えいひ)の使い方、コツについて。 意外と上手く使えていない人がいるような気がします。 鋭匙の性能をフルに発揮すれば、1-2mm硬膜が見える穴が開いているだけで内板がほとんど残っていても、きれいなBurr holeまで広げることが可…

バイポーラの使い方

道具シリーズその①、バイポーラについて。使う際のコツなどをまとめてみます。 バイポーラ(bipolar、通称バイポ)はピンセットのような形をした道具で、先端の金属部分の間を通電させることで対象を凝固(蛋白変性)させるのが主なはたらきです。血管や組織…

慢性硬膜下血腫2

今回は手術に主眼をおいて説明していきます。 前提条件として、施設によってやり方は様々だと思いますので、基本的に自分が普段やっている方法を紹介します。 慢性硬膜下血腫の手術は基本(準)緊急です。 入院翌日に行う場合などは原則直前の食事は止めます…

慢性硬膜下血腫1

一般的な知識と、入院から退院までの流れについて説明します。 手術の話はまた別にまとめます。 慢性硬膜下血腫は、脳外科で手術を要する最も患者数の多い疾患です。 名前が長いので一般的に「サブドラ(chronic subdural hematoma)」、「まんこう」などと…

ブログ始めました

脳外科を専門とする若手医師です。 現在レジデント(後期研修医)であり、専門医取得前の修行中の身です。 数年ごとに色々な病院を転々としてます。 脳外科に関するあれこれについて、実体験を踏まえて、気が向いたときに書いていこうと思います。 基本的に…